脳梗塞の大きな原因となる頸動脈狭窄症(けいどうみゃくきょうさくしょう)。年間に治療を受ける人は推定8千人ほどといわれる。しかし病状はほとんどなく、脳梗塞を発症してはじめてこの病気がわかることもあり、潜在的な患者はさらに多いと予測される。
頸動脈狭窄症は、脳に血液を送る重要な血管である頸動脈が、狭くなったり(狭窄)、詰まったりする病気だ。頸動脈は、あごの下で脳へ向かう内頸動脈と顔面へ向かう外頸動脈とに分かれる。この分岐する部分の血管の内側に、余分なコレステロールのかたまり(プラーク)がたまり、血管が狭くなってしまうのだ。高血圧、脂質異常症、糖尿病などによる動脈硬化が原因になる。
プラークがはがれて脳の血管に流れて詰まってしまうと、脳梗塞になる。脳梗塞の約3分の1がこのパターンで起きるといわれるため、頸動脈狭窄症の治療は脳梗塞の予防にとって重要だ。
頸動脈は、狭くなっても軽い場合は自覚症状がないことが多い。だが狭窄が進むと、手足のまひやしびれなどが一時的(数分間から24時間)に出る「一過性脳虚血発作(TIA)」が起きるため、それがきっかけで発見されることが多い。
頸動脈狭窄症を発症する患者は、動脈硬化が進んでいるため、ほかの血管にも病気が起きている可能性が高い。そのため一度発症したら、動脈硬化や血管疾患にくわしい医師の診療を受けることも必要だろう。
予防のためには、日頃から動脈硬化や血管疾患にくわしいかかりつけ医を探し、定期的に頸動脈の状態を調べてもらうことも大切だ。
※週刊朝日 2013年2月15日号