新型コロナウイルスの感染拡大が長引き、自宅に閉じこもってふさぎ込んでいる高齢者は多いのではないだろうか。そんな中、ほとんど笑わない人はほぼ毎日笑う人に比べて、要介護リスクが1.4倍高まるという研究結果が出た。コロナ禍でも健康を損なわない秘訣(ひけつ)は“笑い”にありそうだ。
お笑い芸人として活動しながら、作業療法士として高齢者施設で働く介護エンターテイメント協会代表の石田竜生さんも、楽しい空気作りの大事さを説く。笑いを取り入れた認知症予防体操などを各地で行ってきた。
「笑いはスイッチなんです。高齢になると家で動かなかったり、外に出られなかったりといろいろ。人とのつながりがなくなると感情が平坦(へいたん)になってしまい、より動かなくなります。そういうときに笑いは有用です」
石田さんは高齢者によく、「心が動けば体が動く」と話すという。
「実際に90代の女性が『最近笑っていなかったけど、笑うことで一気に体操ができました』とか明るい表情で話してくれたこともあります」
ただ、石田さんは「体操はできなくてもいいんです」と語る。
「みんなできないのが当たり前だと思ってほしい。漫談家が体の衰えをいじると、みんなそうだよねと笑いになりますよね。体操も同じです。おもしろがって、できない自分を笑えるようになってもいいと思います」
現場では気になることもあるという。男女での笑う頻度の差だ。
「男性のほうが笑いが少なく感じます。そうしたときはまずは体から動かしてほしい。心と体は対なので、体を動かすことで表情が緩んで、心にスイッチが入ることもあります」