2019年にM-1王者となったのはミルクボーイ(撮影/中西正男)
2019年にM-1王者となったのはミルクボーイ(撮影/中西正男)
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「M-1グランプリ2020」の審査員が発表された。

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 最多の14回目の審査となる松本人志を始め、8回目となる上沼恵美子、オール巨人。そこに、立川志らく、「中川家」礼二、「サンドイッチマン」富澤たけし、「ナイツ」塙宣之というメンバーが勝負を決する役割を担う。

 結果的に、3年連続で同じ顔ぶれとなったが、「来年もよろしくお願いします!」的な軽いノリで決まるものではなく、毎年、毎年、審査員を選ぶ側も、審査員として選ばれる側も、大きな覚悟を持ってのぞむ場だと各所から聞く。

 言わずもがな「M-1」に出場する芸人たちにとっては人生をかけた戦い。決勝常連の「和牛」は、ほぼ全ての劇場出番でスタッフに細かくストップウォッチでネタのラップタイムを計測してもらい、どのパートで何秒かかるか。細かい時間調整を重ね、4分間を最大限有効活用する精密機械のようなネタを作っている。

「毎月新ネタライブをやっているようなネタ作りに熱心なコンビでも『これはいける!』と思えるネタができる割合は本来3年に1本くらい。『M-1』で優勝するには、決勝で2回漫才をやらないといけないので、勝てるネタが最低2本は要る。毎年、この2本を必ず作るというのは至難の業。むしろ、できたら奇跡の領域。みんな尋常ならざる時間と力を注いで、その研究開発にあたっています」(関西を拠点に活動する構成作家)

 また、その勝負を裁く審査員にも特別な重圧がかかるのも「M-1」ならでは。実名は伏せるが、東京で活躍する超売れっ子芸人と「M-1」の審査員の話をしたことがある。

「ギャラが10億円ではやらない。100億円もらったらやるかもしれませんけど(笑)」

 冗談めかして話していたが、それくらい芸人としては負担がかかる仕事ということだ。

 僕は「M-1」の審査員を“清純派女優がヌードになるくらいの覚悟がいる仕事”ととらえている。全てがさらされる。場合によっては、これまでの蓄積を一気に失ってしまう。しかも、収録ではなく生放送でもある。

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