唐辛子やショウガで体温が上がる、子宮を温めると妊娠しやすくなる――。聞いたことあるかもしれないが、実は根拠がないという。一体どういうことなのか。AERA 2020年11月23日号で専門家が解説する。
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■疑問その1 唐辛子やショウガで体温上がる?
「夏野菜は体を冷やし、冬野菜は体を温める」「暑い地域でとれるものは体を冷やし、寒い地域でとれるものは体を温める」。こんな説を聞いたことはないだろうか。だが、生命創成探究センターの富永真琴教授はこう話す。
「ものを食べるというのは、体温を上げる活動の一つであり、温かいものを食べれば、その分体は温まります。しかし、特定の食事成分で体温が上がるという科学的なデータは、見たことがありません」
しかし、唐辛子やショウガなどは「体を温める食材」としてよく知られ、食べれば実際に温かく感じるが……。
「それは“ぽかぽか感”であり、実際に体温が上がっているわけではありません。人間には温度刺激を感じ取る『TRPチャネル』があり、おもしろいことにこのセンサーは、唐辛子やショウガの成分にも反応するんです」(富永教授)
唐辛子やショウガは、「熱い」と感じるセンサーに反応するため食べると体がぽかぽかする。反対に、ミントの主成分であるメントールは、冷たさを感じるセンサーに反応するため、清涼感が得られる。しかしいずれも体温自体を上げ下げする効果はないという。
とはいえ、寒い時期のぽかぽか感は非常に大切だと富永教授は言う。
「ぽかぽかしているということは、外気の寒さで収縮した血管が開き、血液が巡っているということ。これからの季節、この“ぽかぽか感”を大いに活用してください」
■疑問その2 子宮を温めて妊娠しやすい体になれる?
妊娠したい女性のための「妊活雑誌」をめくると、「温活で妊娠」「子宮を温めて妊娠しやすく」などの情報が満載だ。しかし、産婦人科医で女性の体に関する著書も多い宋美玄医師は、「『子宮を温めると妊娠しやすくなる』という言説には何の根拠もない」と指摘する。