■どんな老後かで受給法が変わる
もちろん、一時金で受け取るのが悪いわけではない。
「最後は一人ひとりのライフプランによる、としか言いようがありません。自分へのご褒美に別荘生活をしたいと思う人は、堂々と一時金をもらって別荘を買えばいい」と先の澤木氏。岡田主席研究員も「自分自身の退職金を全額、年金受け取りにしたかったのですが、定年を機に借金を返済したほうが人生全体にはプラスになると思い、半額を一時金で受け取りました」と打ち明ける。
仕組みを知れば知るほど悩ましくなるが、人生いろいろ、まさに個人の事情もそれぞれ。結局は、自分が老後に何をしたいか、どんな生活を送りたいかを考えてから、受け取り方法を決めるのが“王道”なのである。
もっとも、受け取り方法で悩むなどというのは、まだ恵まれているのかもしれない。運用環境の悪化で、これからのDBは運営がさらに苦しくなりそうだからだ。
第一生命は10月、DB向けの企業年金保険の予定利率1.25%を、来年秋から0.25%へ引き下げると発表した。先の山崎氏が言う。
「これはDBにとっては銀行の定期預金に相当する商品。ノーリスクで利回りが得られていたのにそれがドンと下がる。おそらく他社も追随するでしょう。中小企業のDBが、生保のこの種の保険で多くを運用しており、短期的にはそこに影響が表れる可能性がある」
大企業のDBはどうか。
「運用割合は低いものの引き下げは痛手です。すぐには影響はないが、3~5年後ぐらいに、このことを理由の一つに給付引き下げを打ち出す企業が出てくるかもしれません」
前述したように、いったん受給権を得てしまえば強いが、社員でいる間に会社の制度変更があれば従うほかない。企業年金では「60歳定年」が「逃げ切り」のメルクマールになるのかもしれない。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2020年12月11日号