●第2のトランプへの期待

長野:トランプみたいな大統領が生まれたのは、いわゆるベテラン政治家が築き上げてきたものを壊せるのはこの人しかいない、全部壊して組み立て直してほしい、という期待もあってのことだったと思うんです。でも、トランプはエスタブリッシュメントに独占された政治のみならず、いわゆるポリティカルコレクトネスという倫理観も破壊し続けた。今回の選挙では、トランプが壊して組み立ててくれるかなって期待していた人たちが「これは無理だ」「このままでは本当に何もかも壊されてしまう」と考えたから、少し揺り戻しがあったんでしょうね。ところで、トランプの敗因はコロナ対策の失敗だという見方がありますね。私は抵抗があるんですけど、星さんはいかがですか?

星:結果的に感染者数と死亡者数が増えたのは間違いないけれど、米国人からすると、誰がやってもおそらくこんなものだろうという思いがあるでしょう。むしろ規制を強めるバイデンの手法に対して警戒している人が、半分くらいはいますよね。

長野:そうですね。私がいちばん驚いたのは、フロリダとかオハイオでした。いわゆるエッセンシャルワーカー、カラード(有色人種)の人々が、意外にも、人種差別的な発言を繰り返すトランプに入れていた。ロックダウンしたら生きていけない人たちが相当数いたっていうことなんですよね。

星:特にフロリダは、これ以上規制が続くとやっていられないという観光業関連の人々がトランプに流れましたね。

長野:だから、単なるコロナ対策の失敗では表現しきれない。

星:やっぱり、人種問題が大きかったんだと思うんですよ。人種問題はそれほどきれいごとでは片付けられないかもしれないけれど、(黒人への差別反対を訴える)「ブラック・ライブズ・マター」が噴出して、「これはまずい」と思い始めた人が多かったのではないかと。だから、初の有色女性副大統領になるカマラ・ハリスの存在が、最後の決め手だったと思うんですよね。

ただ、いま米国のメディアは、「バイデンは米国の良心だ」って言っているけれど、しばらくすると、「なんかちょっと政治が退屈になったね」っていう話になるんじゃないかと危惧しています。「トランプのときは毎日いろんな発言があって面白かったし、視聴率も取れたよね」と考えたメディアが、「第2のトランプが出てこないかな」って話になるんじゃないかという危惧がある。

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