地球を次の世代に引き継ぐために生まれたSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)。2030年以降もより良い社会をつくり続けるため、必要とされているのが教育だ。
■実は15年前から始まっていた「ESD」
スウェーデンの16歳の女の子、グレタ・トゥーンベリさんをご存じだろうか? 2018年夏、気候変動の危機を訴え、地元の議会前で一人座り込んで抗議活動を行い、一躍有名になった女性だ。
訴えは大人たちの心を動かし、同年12月には「国連気候変動枠組条約第24回締約国会議」(COP24)に、翌1月には「世界経済フォーラム」(ダボス会議)にも招かれ、現在の危機的状況を作った大人たちに対して、強く、まっすぐな諫言を放った。その訴えはもちろん若者の心も動かし、今や気候変動への対策を求める「気候のための学生ストライキ」は40を超える国にまで派生、世界的な広がりを見せている。
いま、SDGsは若者世代で広がりを見せている。電通の調査によると、日本の学生におけるSDGs認知度は、18年の13.4%から19年には24.8%と大幅に上昇。全世代の認知度向上が1.2%だったことを考えると、群を抜いた増加率だ。
実はSDGsの採択より10年以上も前、「持続可能な開発のための教育」を指す「ESD(Education for Sustainable Development)」が提唱されていたことはあまり知られていない。これは、社会課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組むことで持続可能な社会の創造を目指す学習のこと。つまり、持続可能な社会の担い手を育てる取り組みだ。その推進拠点と位置付けられる「ユネスコスクール」は、日本になんと1100校以上もある(18年)。
■観て、体験して 自ら判断する人材を
東京・吉祥寺の成蹊学園は18年、成蹊学園サステナビリティ教育研究センターを開設した。自校の強みを振り返るなかで、教育方針や内容が「ESD」そのものであると気づき、推進のための機関を設けた。現在、小学校から大学まで全校横断型の取り組みに加え、地域や外部機関との連携も深めている。
もともと成蹊学園では「本物に触れる」を方針に、実験や観察を通して問題意識を温め、科学的思考に高める教育を行ってきた。たとえば1925年から90年超の歴史をもつ気象観測や、同じく90年以上続く「理化教育」はその一例だ。これらがESDの目指す姿や内容と合致していると分かった。
同校の目指す人材像について、同センター所長で、成蹊大学理工学部教授の池上敦子さんはこう語る。
「自分の頭で考えられる人。そのためには、与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、観察して、体験して、自分で判断する力が必要です」
事実、成蹊学園には「育てる」「観察する」などを通じて、考えるきっかけを与えるプログラムが多い。