小学生は、五感を使った直接的な体験を大切にする授業「こみち科」を全学年で実施している。たとえば、落ち葉から土を作り、作物を育て、収穫し、食べるところまでを自分たちの手で行う。またエコバッグを作って学内の植物で染色、そのバッグを使用することでビニール袋の使用減までを一連の学習として体験。総合学習の先駆けとして、形を変えながらも続いている。
■多様な意見を受け入れる土壌
中・高校生は毎日気象観測を行い、気温や湿度を記録している。長年の気温変動をグラフにすると「温暖化」の動きは手に取るようにわかる。また人権問題をより理解するためにらい病の施設も訪問。結果、ニュースで聞く「遠い社会の話」が、自らの肌感覚で理解できるようになるのだ。
同センターの副所長で、成蹊大学経済学部教授の小田宏信さんは「ESDは、問題意識をもつことと、どうアプローチしていくのか、の2つの視点がある」という。さまざまな体験学習を経て、自らの問題意識をもち、自らの手でアプローチをしてみる。そんな生徒たちは、それぞれに「自分なりの意見」が生まれていくという。
「日本では、意見を述べることを遠慮し、独自意見を持つことすら避ける場合もある。でも、当校にはディスカッションで大人と対等に議論する生徒もいる。多様な意見を言い、受け入れる土壌が自然と醸成されているのでは」(池上さん)
日本の教育現場では、テストや受験など、目の前の評価につながる勉強が重視されることが少なくない。しかし、自ら取り組み、考える「未来の担い手」を育むには、詰め込み型の学習では不十分なのだ。
2008年に公示された小学校・中学校の学習指導要領、および09年に公示された高等学校の学習指導要領には、持続可能な社会の構築の観点が盛り込まれている。大人たちは、子どもたちにより良い地球を引き継ぐことに加え、ESDの環境を整えることも忘れてはならない。
(文・吉田理栄子)
※「SDGs MOOK」(朝日新聞出版/2019年6月発売)より転載