
織田信長の末裔(まつえい)を自称し、水晶玉を使って「霊視」「除霊」をするなど、1990年代のワイドショーやバラエティー番組を席巻した僧侶、織田無道さん。12月9日に亡くなっていたことがわかり、織田さんと旧知の記者が、がんが見つかってからの様子や織田さんの隠れた交友関係などをつづった。
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織田さんががんと向き合い始めたのは2018年6月。がんの発覚から闘病、その後の状況や心境などについて、以前会った時に聞くと、こう話し始めた。
「最初ね、右ひざが痛くて歩きづらくなったんですよ。これじゃご葬儀ご法事といった坊主の仕事に支障があるからと、すぐにかかりつけの病院で検査してもらいました」
結果はがんではないと告げられたという。しかし、体調は悪くなる一方だったため、セカンドオピニオンを聞こうと近くの大学病院で検査を受けたところ、
「すでに胃、腎臓、肝臓、直腸、大腸、おまけに肺にまで転移していて、まさに全身ががんのデパート、総合商社だったんです。ステージ4どころか、そんなのとうの昔に突き抜けて、末期も末期、末期っ期でした」。
僧侶だからだろうか。動じる様子はなく、自虐ギャグを交え、時にはあっけらかんと笑いながらその経緯を話した。
「担当医に、余命はどのくらいでしょうか?て聞いたんです。そうしたら、『余命1年、と言いたいけど、今日、明日死んでも不思議はない』と。それ、『北斗の拳』の決めゼリフみたいじゃないですか。あぜんぼうぜん、目が点でしたねえ」
それでも簡単に諦めないのが「無道流」だ。
「冗談じゃねえと、都内の著名ながん専門病院、神奈川県屈指の大学病院に駆け込み、徹底して検査してもらいましたよ。でも答えはどこも同じ。『手遅れです。手術も抗がん剤治療も無駄。せいぜい数カ月延命できるかどうか』って両方で断言されました。そこまでサジを投げられたら、もう笑うしかありませんよ」
ただスッパリと宣告されたのが、むしろ良かったと織田さんは言う。