学級では、休校中も保護者がプリントに取り組むよう促し、塾のオンライン授業を受けている子もいる。
「いままでなら学校がカバーしていた家庭環境の差がもろに出て、学力格差がどんどん広がっている。感染の拡大につれて格差の拡大も止まらないのがこわい」と幸恵先生は話す。
「コロナ格差」は学級も揺さぶる。大阪府内の小学校では9月、5年生のクラスのひとつが「学級崩壊」した。新採用の担任の先生が授業をしようとしてもマスク姿の子どもたちが雑談をやめない。
同じ学年の先生の目から見た学級の様子は、こうだ。何人かが教室から走って出ていき、先生が追いかけていると、授業がそのつど止まる。他の子どもたちは、またか、とうんざりしている。塾で先の内容まで教わっている児童は、学校の授業は「かったるい」。勉強が苦手な子は授業に置いていかれ、ますますわからなくなる。
同じ学年の先生は言う。
「教師の未熟さ、学級を練り上げる学年頭が休校だったこと……。理由はいろいろあると思うが、クラスの児童の間の学力格差が広がり、どこに焦点をあてたらいいかわからないことがある」。保護者会では担任への批判が相次ぎ、12月1日から担任が交代した。
「コロナ前から厳しい家庭環境だった児童生徒には、勉強どころではない子がいる」と静岡市の小中学校でスクールソーシャルワーカーを務める川口正義さんは話す。
「保護者が休業や失業で仕事を失い、夫が妻に暴力をふるうなど、家庭が安全安心な場ではない。そのしわ寄せが子どもに来ている。休校中にゲーム漬けになったり昼夜逆転したり、リストカットしたり」と川口さん。従来の格差や貧困をコロナがあぶりだし、増幅した形だ。
そんな子らを支える動きはどうか。文部科学省初等中等教育局は6月、「『学びの保障』総合対策パッケージ」を発表。「あらゆる手段で、子供たち誰一人取り残すことなく、最大限に学びを保障」と掲げ、コロナ対策と学びの保障の両立を目指す施策を集めた。