例えば学習内容を次年度に繰り越すのを認めたり、校内でしかできない協働学習や実習に優先的に授業時間を使い、一人でできる学習はICTも使いながら自宅でするよう促したり──といった内容だ。経済的理由で環境を準備できない家庭への支援にも触れている。
低所得の世帯の家庭学習を支えるための通信費について「要保護児童生徒援助費補助金、特別支援教育就学奨励費、高校生等奨学給付金の特例的な追加支給により対応」といった記述もある。
だが、困窮している家庭の子どもの学習を学校以外の場で直接支える施策は見当たらない。
これまでの学習の遅れに家庭環境の厳しさが加わり、さらにオンライン環境のなさが重なる三重苦。子どもたちをどう支えるか。NPO法人のなかには、子どもたちや保護者を支援する取り組みが出てきている。
NPO法人の「カタリバ」(東京都)はコロナ禍で困っている子に学びの機会を届ける「あの子にまなびをつなぐ」プロジェクトを立ち上げた。
一斉休校を受け、カタリバは小中高生向けのオンラインの居場所を開き、英会話や遊びのプログラムを提供してきた。
さらにオンラインに集える環境にない子らにパソコンとWi-Fiを無償で貸す試みを「キッカケプログラム」として開始。AI型タブレット教材「Qubena(キュビナ)」や、フィリピンの英会話の先生と楽しく英語を学べる「WAKU WORK ENGLISH(ワクワークイングリッシュ)」を無料で使えるようにした。
課題を抱える子どもへの個別面談や、保護者とのオンライン相談、福祉相談など顔の見えるつながりを大事にしながら伴走している。2020年度は350人の子どもを支援し、さらに来春以降も継続的に取り組む。(朝日新聞編集委員・氏岡真弓)
※週刊朝日 2020年12月25日号より抜粋