TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は、韓国ドラマ『補佐官─世界を動かす人々』について。
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自民党総裁選をテーマにした情報ワイドで、「政治は政策より『人情』で動く」と評論家が解説していたが、韓国ドラマ『補佐官─世界を動かす人々』(Netflix)を観て、その義理と人情こそがすこぶる面白く、なるほど政治家のモチベーションはここにあるのかと思った。
義理と人情のはざまで理想をいかに追い求めていくか。これは選ばれし政治家のみが成し得ることだとも。
警察学校を首席で卒業した主人公(イ・ジョンジェ)が、補佐官として政治の世界に飛び込み、元ニュースキャスターで国会議員の恋人(シン・ミナ)と国会議員を目指す「サバイバル生存記」が本作だ。主人公が仕える親分の国会議員(キム・ガプス)の腹黒さが何とも痛快だった。韓国では何をするにもまず食事からと言われるが、この親分もライバルの市民政治家を指して、「無欲な奴ほど面倒なものだ。だったら奴に欲を持たせてやるまでだ」と箸で鍋の具をつつきながら懐柔策を練る場面は背筋が凍った。
土下座も日常的に登場する権力闘争劇で、主人公は「半沢直樹」ばりの倍返し戦術で正義の実現を目指して上りつめていく。
僕の勤めるラジオ局は半蔵門にある。
報道部長だった頃、国会や選挙のたびに国会記者クラブに通ったが、永田町は24時間蠢(うごめ)く政治の世界と実感した。
ある夜、仕事を終えて番組スタッフと麹町にある小さなイタリアンレストランに入ったら、自民党S参院幹事長と元民主党参院議員だった奥さんが奥のカウンター席でワインを傾けていた。
僕らの番組話に興味を持ったのか、こちらの話題に夫婦で耳を傾けているのがわかった。生き馬の目を抜く世界で束の間の休息を楽しんでいる様子が微笑ましかった。