東大の合格自体が目標になっていると…
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「どうやったら売れるんですか? 売れる方法を教えてください」

 情報産業の営業現場で働く社員は、東大卒の新人社員にこう言われて唖然としたという。この新入社員はさらに、「教えられないとできませんよ」とまで言い放った。『雇用の常識 決着版 「本当に見えるウソ」』(ちくま文庫)などの著書があり、就職事情に詳しい海老原嗣生(つぐお)氏はこう語る。

「民間企業は、少し前までは東大生なら喜んで採っていました。でも、最近はそうでもない。使えない東大卒社員も多いからです。ある企業では、何人もの東大出身者が20代で見限られたそうです。詰め込み型の受験勉強をしてきたので、タイプ別に分類して、こういうときはどうしたらいいですかって、いちいち教えてもらおうとする。でも、そういう社員は手がかかるし、できる上司には疎んじられるんです」

 海老原氏は、東大合格者を(1)学級委員長などもこなし、1番であろうと頑張り続けてきた人(2)教養もある本当に優秀な人たち(3)勉強だけができる人たち――の三つに分類する。このうち、社会で役に立たないのは、(3)のタイプだという。

「1番であり続けようとする力や、深い教養は社会に出てからも生きますが、勉強ができるだけでは、社会ではやっていけませんからね」(海老原氏)

 東大の合格者は年間約3千人。「いつやるか? いまでしょ!」のCMで知られる東進ハイスクール講師の林修氏によれば、社会に出てうまくやっていけないのは、合格の順位が半分より下の学生に多いという。

「こうした層の学生は、東大の合格自体が目標になっていて、その先の目標が見つからないんです。一生懸命勉強した、受かった、東大すごいだろって、権威に頼ってしまう。受験漫画の『ドラゴン桜』には、『バカとブスは東大に行け』っていうセリフが出てきましたが、ぼくもまったくそのとおりだと思います。本当に自分に自信があったら、東大なんて行く必要ないですからね」(林氏)

週刊朝日 2013年3月22日号