独特な医療を行っているうちの病院には昔から、セカンドオピニオンを求めてやってくる患者さんが後を絶ちません。
もちろん、主治医からすると、自分の治療方針に納得せずに、他の医師に話を聞こうというのですから、気分を害する人もいました。昔は多くの場合そうだったのです。
患者さんは紹介状を持ってくるのが普通ですが、紹介状を書いてもらえなかったり、書いてもらってもやたらと略字が多く、木で鼻を括(くく)ったような内容だったりしたのです。
ところが、最近は違います。誠意のこもった内容の紹介状ばかりなのです。それだけセカンドオピニオンが定着し、医療の主人公は医師ではなく、あくまで患者さんであることが理解されるようになったのでしょうか。
うちに来る患者さんは、手術と化学療法を勧められたが、その両方とも受けたくないという方が少なくありません。しかし、外科医だった私が診て、手術をした方がいいことも多いのです。その時は手術をしっかり勧めます。そして最後にこう付け加えます。
「主人公はあくまであなたです。最終的にはあなたが決断すればいいのです。あなたがどう決めようと、私たちはそれに従ってお手伝いします。どうぞ、ご心配なく」
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2021年1月1‐8日合併号