しかし、夫婦での入居であれば自宅が不要になるので、自宅を売却してまとまった資金を得られる場合や、賃貸に出せるようなケースでは、資金面でのハードルは大きく下がります。自宅の立地に左右されることになりますが、検討の価値はあるでしょう。
ただし、夫婦向けの居室では、一人部屋より面積が広く取られているだけで、間取り自体はワンルームであることも少なくありません。こうした居室ではお互い一人の時間を持つことが難しいことにも注意する必要があります。
コストを重視するなら別居が有利になりそうですが、すべてのケースで安くなるとは限りません。この差額には自宅に残る夫の生活費は含まれていないからです。
自宅が賃貸であれば、別居すると2世帯分の家賃がかかることになりますし、光熱費などは同居したほうが安くすみます。夫が自炊をせずに外食がちになると、生活費が膨らむこともあるでしょう。
比較する際は、自宅に残るほうの生活コストや自宅にかかる費用なども考慮することが重要です。
また、老々介護は年齢を経るほど介護する側の負担は大きくなるので、同居することによる心身の負担も考慮する必要があります。
別居して一定の距離を保ちながら、定期的に通ってお世話をするほうが良い関係を保ちやすいこともあるでしょう。
■ケース2:介護のために仕事を辞めていい?
次は、親の介護で仕事を辞めていいか悩む一人娘のケースです。
<一人暮らしをしている80歳が要介護2の認定を受ける。遠方で離れて暮らす50歳の一人娘は、父親を一人にしておくことがいよいよ心配になり、仕事を辞めて実家に帰るか、父親を施設に入居させるか悩んでいる。
その後、父は88歳で要介護3、90歳で要介護4、91歳で要介護5となって、その1年後に死亡すると想定>
年老いた親に精いっぱいのことをしてやりたいとは誰もが思うものです。仕事を辞め、実家に帰って在宅介護をするか(A)、親を有料老人ホームに入れるか(B)で、悩む人も多いのではないでしょうか。