「よほど資産がある家庭でないかぎり、仕事を辞めるとその後の生活に窮することになってしまいます。仕事を続けながら『遠距離介護』をする人も多くいるので、まずはケアマネジャーに事情を相談し、仕事を続けながらできるケアを考えましょう」(齋藤さん)

 まずは介護休業などを利用して実家に帰省し、その間にケアマネジャーと利用予定の施設や自分が留守の間の態勢を打ち合わせ、手続きなども済ませましょう。

 介護休業は介護そのものではなく、自分がいない間のサポート態勢を構築する期間だと考えます。

 仕事に復帰したらケアマネジャーや施設とも連絡をとりながら、日常的なサポートは介護保険のサービスを活用します。自分は休日や有給休暇などを利用して、定期的に親元に通うという方法です。

 介護保険の上限額を超えてしまったり、医療費が高額になったりした場合には、一定額を超えた分が戻ってくる「高額介護サービス費」や「高額医療・高額介護合算療養費」の制度も活用しましょう。

 遠距離介護に限界を感じるようなら、施設入居も検討します。ここでは、やや高級なホームで試算していますが、もう少しお手頃な価格帯のホームもあります。また、住み慣れた土地以外のホームでもかまわないのであれば、比較的安価な地方のホームなども検討してみてもいいかもしれません。

 親の介護を終えた後も、人生は長く続きます。退職の判断は慎重に行いましょう。

(文・森田悦子)

※週刊朝日ムック「高齢者ホーム2021」より抜粋

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