ひとたび発生すれば揺れや津波による被害に加え、富士山にも噴火の恐れがあるという。富士山が最後に噴火したのは江戸時代の南海トラフ地震である宝永地震(1707年)の49日後だった。

「火山と地震活動はリンクしていて、周辺で巨大な地殻変動があると噴火しやすくなる。南海トラフ地震が富士山の噴火を誘発したと考えられます」(遠田教授)

 立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授は、富士山噴火についてこう話す。

「南海トラフ地震はフィリピン海プレートが下に潜り込んだ影響でユーラシアプレートが跳ね上がって起きますが、富士山は両プレートの境界線近くにある。ユーラシアプレートのひずみはかなり溜まっており、現在、南海トラフ地震やそれに連動した富士山の噴火はいつあってもおかしくありません」

 高橋特任教授は茨城から東京、沖縄を経て台湾、フィリピンまで連動した大地震「スーパー南海地震」が起きる可能性もあると指摘する。その時、首都圏はどうなるのか。

「南海トラフが他のプレートにも影響を及ぼし、東京湾口の相模トラフでも巨大地震が発生します。津波が首都圏にやってきて、関東平野は水浸しになる。東京は埋め立て地で標高1メートル程度の町も珍しくありませんから、銀座やお台場、東京駅や品川駅などは水没するでしょう」(高橋特任教授)

 人が密集する避難所で新型コロナの感染が拡大するなど、新たなパニックも予想される。どう行動したらいいのか。

「どこかへ逃げるというより、それぞれの場所で過ごす方策を普段から考えておいたほうがいいでしょうね。ライフラインの電気、ガス、水道は止まる前提で、それでも1~2日は家で過ごせるよう、水や食べ物は備蓄しておいたほうがいいでしょう」(前出の山岡教授)

 それでも、被害が大きいときには迷わず避難するのが正解のようだ。

「建物に少しでもダメージが出たり、家の家具などがグシャグシャになったりする状況なら、外に出たほうがいい。避難所は密にはなりますが、まずは倒壊などから命を守るほうを優先し、避難所へ向かうのが基本だと思います」(遠田教授)

(本誌・上田耕司)

週刊朝日  2021年1月15日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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