エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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夕食の時は、ダイニングテーブルの私の席に置いた端末で、息子たちと話します(夫撮影)(写真:本人提供)
夕食の時は、ダイニングテーブルの私の席に置いた端末で、息子たちと話します(夫撮影)(写真:本人提供)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】離れて暮らす家族とは 夕食時にビデオ通話で会話する

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 去年とは様変わりの年末年始。どこでどう過ごしていますか。私は人生初の、たった一人の年越しです。オーストラリアで暮らす夫と息子たちと離れ離れで迎える、6年ぶりの日本の新年。大掃除をする他は、ひたすらキーボードを打って過ごします。

 家族とはほぼ1年間、会っていません。毎朝晩、ビデオ通話でつながる間柄。とはいえパースに引っ越してから7年近く、私が日本で働いている時はいつもそうなので慣れています。さすがに1年も帰れないのは初めてですが、これまで通りと言えばこれまで通り。むしろ去年は生身で会えない分、命や社会について真剣に話す時間が増えて、一層家族の関係が深まりました。普段から夫とは日に何度もメッセージをやり取りするし、毎晩夕食後は長男か次男の部屋に端末を置いてビデオ通話をつなぎっぱなしにしてくれるので、この7年を振り返っても、あまり離れていた感じがしません。

 長男は大学受験、次男は思春期真っ盛りの1年でしたが、大事なときには顔を見てじっくり話をして、子どもたちの成長を実感することができました。これまでも、何度そうやって海を越えて話をしてきたか。インターネットがなかったら、離れていてもこんなふうに家族の時間を持つことはできなかったでしょう。技術の進歩に心底感謝です。

 いつも体がそばにあり、見た目上は波風のない日々を過ごしてさえいれば“いい家族”が育つものではないですよね。会えない時間もパンデミックも思春期もさまざまな葛藤も、一緒に悩み、語り合い励まし合って乗り越えるから、特別な関係になるのです。改めて、夫と息子たちはかけがえのない冒険仲間だなあという思いを強くしました。やっぱり最高のチームだなと。

 さて、あなたの新年はどうですか。見慣れた顔と、何を話すのでしょうか。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年1月11日号