なぜそうなるのかといえば、自民党の族議員と医師会の癒着により、これらの不正への厳罰化ができないのが第一の理由。また、マスコミが大スポンサーの医療産業の不祥事には非常に甘いこともこの問題が野放しになる一因である。今回も朝日の記事を追いかけた社はなかった。
菅義偉内閣は、「規制改革!」と叫んでいるが、議論の内容は、企業のため、経済効率のための規制緩和の話ばかり。
だが、今求められている規制「改革」は、そうした従来型の規制「緩和」だけではない。むしろ、格差拡大、大企業や富裕層の不正、政治家の不正など、これまで放置されてきた「不公正」を正すための規制「強化」がより強く求められている。
こうした規制強化に目をつぶり、企業のための規制緩和ばかり進める政府のやり方では、規制改革全体への国民の信頼を失い、大きな改革はできないだろう。
菅政権は、今回の報道に全く反応していない。医者や医療産業の不正行為にメスを入れる勇気がないのだ。「菅改革」は、国民のためではない。期待するだけ無駄なようだ。
※週刊朝日 2021年1月22日号
■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)など