昨年11月24日朝日新聞1面の記事。
世界的な大手医療機器メーカー「グローバスメディカル」の日本法人が、同法人の機器を購入した病院の医師側に売り上げの約1割を還流させていたというニュースだ。
2019年1年間だけでも、二十数人に総額1億円超、1人当たり百十数万円から2千数百万円が支払われた。かなり前から行われていたらしい。
購入された機器は脊椎インプラントで、その購入価格は数万円から数百万円。購入費用は保険料や税金からなる診療報酬で賄われる。
こうした医療機器・医薬品のメーカー・販売業者によるリベート不正は、昔はよく問題になっていたが、最近では、少なくとも大病院ではほとんど問題になることはなくなっていた。
しかし、今回の報道は、いまだにこうした不正がかなり広範囲に行われていることを示した。リベートの支払いが、医師本人や同姓の家族名義ではなく、医師とは関係なさそうな会社を作ってそこに振り込むという悪質な手口だったため発覚が遅れたようだ。逆に言えば、本件は氷山の一角で、他にも似たような事案がたくさんある可能性が高い。
こうした不正により、機能的に劣った医療機器が選ばれ、患者が適切な医療を受けられない可能性がある。また、リベートの分だけ価格が高くなり、保険財政に不当な負荷をかける。さらに医師の不正所得は脱税につながる。
この不正行為は、患者に対する罪であり、病院に対する罪でもある。さらには税金の無駄を通じた国民に対する罪でもあるから、厳罰が科されて当然だ。例えば、米国では、リベートを支払った企業には巨額の罰金が科され、医師にも禁錮刑などの厳しい罰則がある。しかし、日本ではこうした行為に刑事罰を科す法律はなく、あるのは、景品表示法に基づく業界の公正競争規約だけ。その規約ではリベートは禁止だが、それは業者同士の過当競争を止めるための仲間内の取り決めに過ぎず、患者や国民の利益を守ろうというものではない。規約違反には会社に最大100万円の違約金という軽い罰則があるが、医師は完全に野放しだ。