エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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1月2日、小池百合子東京都知事ら1都3県の知事は西村康稔経済再生相に緊急事態宣言発出を要請した (c)朝日新聞社
1月2日、小池百合子東京都知事ら1都3県の知事は西村康稔経済再生相に緊急事態宣言発出を要請した (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 お正月はいかがでしたか。たっぷり休めば自然とまた仕事が懐かしくなったりするものですが、このお正月休みぐらいの長さが一番いけません。2020年は環境が激変して、みんな疲れがたまっていましたよね。師走の怒涛(どとう)を乗り切って命からがらゴールに倒れ込み、しばし気を失っていた人も多いのでは。で、ようやく起き上がり、休みをエンジョイし始めたと思ったらまた日常に引き戻されるのです。そのしんどさと言ったら!

 私も年末年始は日頃の疲れがどっと出て、しばし泥人形のようになっていました。もうこのまま溶けてしまうのではと思うほど、エナジーがすっからかんでした。なんとか再起してよっしゃと気合を入れたものの、各地の感染拡大は悪化の一途を辿り、年始早々深刻なニュースで一色に。みんなが不安なのだと分かっていても、これは堪えます。

 今はわずかでも、安心が欲しい。ウイルスはいつまでに退却するとは言ってくれないのでどうにもならないけど、国や自治体の長がちゃんと現実を見て先々まで考えた上で行動していると知れば、心強いですよね。信用できるリーダー、頼れるリーダーがいる安心感が欲しいのです。

 目の前で医療現場が限界を超えているというのに、7月のオリンピックが既定路線で語られる。頼む、現実を見てくれ。そうであってほしい未来を語るのではなく、そうであってほしくない未来を想定して、すぐに手を打ってほしい。病床数の確保や医療現場の増員、PCR検査体制の拡充など、感染爆発に苦しむ他国に学んで備える時間は十分にあったはずなのに。

 そう言っている間にも事態は進行しています。誰が感染していてもおかしくない状況だからこそ、敵の動向を知らねば良い策が打てません。徹底した広範な検査で、感染の広がりの実態の可視化を急いでほしいです。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年1月18日号