あてつけのような発言は大きな反響を呼んだが、ネット上では、出番のない村田に同情する声が多く、他チームのファンから「ウチに来い」と移籍を望む声も上がった。

 その後、マギーの二塁コンバートにより、レギュラー復帰をはたした村田は、打率2割6分2厘、14本塁打、58打点の成績を残したが、オフに待っていたのは、まさかの戦力外通告だった……。

 若返りを図るチーム構想から外れたのが理由だったが、「あんなこと言わなければ良かったのに」と退団劇に結びつけるファンも多く、「ヒマー!」は球史に残る失言となった。

 このほか、阪神・江本孟紀の「ベンチがアホやから、野球がでけへん」(81年)、日本シリーズでの近鉄・加藤哲郎の「巨人ロッテより弱い」(89年)も、よく引き合いに出される失言だが、どちらも本人が一字一句そのとおりに言ったわけではなく、実は記者による“作文”。言った覚えがないのに、失言になってしまうのも、この世界の怖さである。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼