そのために屋根は開かないほうがいいし、イベントで荒れないように人工芝にしなければいけない。巨大スクリーンもあったほうがいいので、設置するために観客数が1万席減って1万5千席になりました。平たく言えば、金のための建て替えです。

■「スポーツウォッシュ」

──新ラグビー場はどのようになるのが理想ですか。

「古いものを守れ」と乱暴に主張したいわけではありません。今のラグビー場は築80年近くなので、何らかの手立てを施さなくてはなりません。ラグビー場より20年以上も古い甲子園球場は、改修して今も利用されています。計画では神宮球場と場所を入れ替えることになっていますが、改修でいいと思います。建て替えによって外苑内の樹木を切るなんてナンセンスです。

──ラグビー界から批判の声があまり聞こえてきません。

 僕もそうでしたが、ラグビー関係者が知らない間に計画が粛々と進んでいたんです。

──日本ラグビー協会会長だった森喜朗元首相が2012年の段階で、都副知事らとラグビー場と神宮球場の入れ替えについて話した記録が残っています。

 スポーツに親しむ場所を作ると言うと、再開発して高層ビルを建てると言うよりも受け入れやすくなる。だから、単なる改修より、新しいスポーツ施設を作ることにすれば再開発に反対しにくくなる。スポーツの健全さというイメージを使って再開発を進めやすくしたという点で典型的な「スポーツウォッシュ」です。

 まずは多くの人に計画の詳細を知ってもらい、その上で何らかの意思を表明してほしい。それがラグビーの未来のためになります。(構成/編集部・井上有紀子)

AERA 2023年2月6日号

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