「新型コロナの患者数が増えてきた現状を考えると、まず保健所や相談センターに連絡するのではなく普通の病気と同じ流れで直接、医療機関に相談するという考え方に切り替える必要があります」(尾島教授)

 また“奥の手”かもしれないが、センターとのやりとりで「あきらめず粘り強く交渉する」ことで結果が変わった事例もある。微熱がありセンターに電話したところ、「『かかりつけ医に診てもらい様子を見てください』と繰り返すのみ。『かかりつけ医がいない』と言っても、『こちらでは紹介できない』と、冷たくあしらわれました」と訴えるのは、中国地方在住の50代女性。彼女は翌日に熱が上がって命の危険を感じ再び電話。応対した別の男性に、

「どうして病院を紹介してくれないんですか」

 と訴えると、男性はこう言った。

「わかりました。PCR検査を受けたいんですね。(市内最大の)A総合病院の代表に電話して、予約してください。自費の4万円で受けられます」

 女性はさらに、こう食い下がった。

「そんなに高いんですか。私は熱があるんですよ」

 すると、男性の対応はこう変わった。

「もう、わかりました。今から言うA総合病院の番号に電話してください。『センターに言われた』と言ってください。公費で健康保険で検査を受けられます」

 結局、無料でPCR検査を受けることができたという。女性は言う。

「ある意味、粘り勝ち。電話だけで自分の症状を理解してもらうのには限界があると感じました」

 このように職員によって対応が違うこともあるようだ。ただし、保険適用扱いにする基準などは地域によって異なる。また、過度な「交渉」はセンターの業務に負荷をかけるため注意が必要だ。

 誰もが「自宅死」の不安におびえる必要がなくなるよう、一刻も早く仕組みを整える必要がある。(井上有紀子)

週刊朝日  2021年1月29日号より抜粋

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