「日本の保護者は子どもの行動をよく見ています。ですが、表情はあまりとらえようとしません。診察室に来た保護者は子どもがいつから不登校で、と時系列は詳しく説明してくれますが、『そのとき、表情はどうでしたか』と聞くと、思い出せない親も多いのです」

■解決策より共感する

 例えば、前述の例のように、ゲームをやりすぎている子どもがいるとき。親は、ずっとゲームをしていると子どもの行動を見て注意するが、子どもの表情は見ていない。つまらなそうな顔をしていることに気づかず、なぜつまらないのかに思いを巡らせないのだという。

「行動だけ見てもわからない問題があるのかもしれません。だから、ただ怒ってもだめなのです。一方で、保護者が先回りして解決策を示すのはよくありません。保護者が子どもの気持ちに共感して『ああ、そうなんだ』と受け止めるだけでも、子どもにとっては力になるし、親子の信頼関係も生まれると思います」(奥山さん)

 前出の横森さんもこうアドバイスする。

「子どもにはなぜ注意をしているのか、感情を抑え子どもが理解できるように説明しましょう。叩いても、子どもが覚えるのは恐怖だけです。体罰を受けた子どもは、落ち着いて話を聞けないなど、心身に悪影響を受けることがわかってきています」

■子どもが意見言える場

 国立成育医療研究センターが20年9、10月に子どもと保護者1万人にストレス状況を尋ねるアンケートを実施した。「コロナのことを考えるといやな気持ちになる」「すぐにイライラする」「最近、集中できない」など何らかのストレスを訴えた子どもが7割に上った。自由記述欄にはこんな言葉が並ぶ。

「子どもがはっきりと意見を言える場所をつくって欲しい(小学5年生)」「大人はいつも怒ったりする時、日ごろのイライラを子どもにぶつけている気がします(小学6年生)」

 前出の奥山さんは言う。

「休校、修学旅行の中止など、子どもをめぐる環境は、すべて大人が決めました。今も学校内で友達との距離を離すようにいわれています。子どもの権利条約には、子どもの意見が尊重される権利があります。頭ごなしの対応ではなく、日々の生活で子どもの声に耳を傾けることをぜひ心がけてほしいと思います」

(ライター・井上有紀子)

AERA 2021年1月25日号

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