テレワークが増加。家庭という、仕事と家事、育児が入り混じった混沌とした空間でイライラが増幅される(撮影/写真部・馬場岳人)
テレワークが増加。家庭という、仕事と家事、育児が入り混じった混沌とした空間でイライラが増幅される(撮影/写真部・馬場岳人)
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「NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア」は、自殺やコロナ不安の相談に応じている。子どもからの相談もあり、LINEやツイッターのダイレクトメッセージで相談にのることもある(撮影/井上有紀子)
「NPO法人東京メンタルヘルス・スクエア」は、自殺やコロナ不安の相談に応じている。子どもからの相談もあり、LINEやツイッターのダイレクトメッセージで相談にのることもある(撮影/井上有紀子)
AERA 2021年1月25日号より
AERA 2021年1月25日号より

 再びの緊急事態宣言。外出自粛はマストだ。その結果、家庭内にイライラがたまる。エスカレートすると、子どもが犠牲になるケースも。虐待の手前で立ち止まるにはどうしたらいいのか。AERA 2021年1月25日号から。

【図を見る】それって虐待?エスカレートしないために必要なこと

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 都内の30代の会社員女性は、テレワークをしながらの家事と育児で、休憩時間がなくなってしまった。ランチタイムに夕食の準備をして、仕事が終われば即、家事に突入。自分の時間が全くなく、小さなストレスが一つずつ増えていく。夫が子どもにつらく当たると、「おかしいよ」とすぐに指摘するが、夫婦関係は気まずくなり、イライラから自分も子どもに声を荒らげてしまうこともある。

「この育て方でいいんでしょうか」

 公園で1歳の長女が泣きやまない。専業主婦の女性(28)はそれだけでも焦るのに、子どもはさらに遊具のあちこちを触り、しまいには土を食べる。コロナ変異種は子どもへの感染力が強い可能性だってあるのに……。心配事は絶えない。最初は優しくなだめたが、言うことを聞かなくてイライラする。家に帰って、夜ご飯にすり下ろしたニンジンを食べさせようとすると、今度は食べない。夫(28)に頼むと、「これからオンライン会議なんだけど」と言い返される。

■売り言葉に買い言葉

 コロナ禍も夫は仕事をして、飲み会も楽しんでいるようだが、自分は夫としかしゃべっていない気がする。

「育児ボイコットしてもいい?」

 そんな気さえよぎる。自分がイライラすると、長女にも伝染して悪い影響を与えるんじゃないかと思ってしまう。

 コロナ禍の外出自粛で、家庭内に親子がこもることが増えた。コロナの不安や在宅勤務のイライラなどが相まって、つい子どもに言いすぎてしまった、という親たちは多いだろう。昨春の長期休校のときほどではないかもしれないが、緊急事態宣言が出た地域もあり、家庭内の親子問題は再び深刻化している。それがエスカレートすると「虐待」にもなりかねない。こんな事例もあった。

 母親が部屋をのぞくと、子どもがまたゲームをしている。

「ゲームやめなさい」

 母親の注意を無視して、子どもはゲームを続けている。昨春の休校から、子どもはゲーム時間が増えて、勉強に身が入っていない。生活態度を変えてほしいと再度注意したけれど、子どもは生返事だ。なんて態度が悪いんだと思うと、頭に血が上ってきた。売り言葉に買い言葉の応酬となり、母親は子どもに暴力をふるった。

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