こうしたアプリは、米国の病院が認知症の診断で使うなど、専門家が認知機能を測定する手段としても利用されている。

 IT会社のベスプラが提供する「脳にいいアプリ」も、計算などの脳トレをしたり、推奨食品を摂取したか食事管理をしたりするほか、「強みは歩くこと」と遠山陽介代表は話す。バーチャル散歩コースを楽しめる上、どこまで歩くか目標が細かく無理のない程度に設定される。

 神経細胞の細胞体が存在する灰白質は、年齢とともに容積が減少するとされている。同社によると、脳MRI検査をしたアプリ利用者の96%で灰白質が増加し、最大で2.1%増えたという。現在、アプリ利用者は6万5千人に上る。

 認知機能が低下したかどうか、簡単に判定できる診断アプリもある。島根大学医学部が提供する「CADI2」で、住民健診や脳ドックなど認知症の早期発見に広く利用されている。設問は10問で、計10点満点。検査時間は5分程度で、回答時間を記録する。

 開発に関わった同大元教授で、島根県病院局病院事業管理者の山口修平さんは言う。

「40、50代で早期診断するのは難しいが、60、70代の人がこのアプリを使うと、病気の人と正常な人に分けられる」

 物忘れのある人は年1回くらいチェックするといいという。

 アプリとはいえ、もともとは健診で使うもの。山口さんは、性能をこう説明する。

「以前の健診はすごく時間や労力がかかったが、アプリを使うことでスムーズにできるようになり、処理のスピード(回答時間)も測れる。専門の検査員がいらなくなった」

 山口さんによると、認知症は脳に不要なタンパク質がたまることが原因で起こり、発症の10~20年前から進行していく。予防のためには40、50代から気をつけ、生活習慣を見直したほうがいいという。高齢の人はむしろ認知機能低下の早期発見が重要なので、診断アプリをより活用したい。

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