科学、技術、工学、アート、数学を複合的に学ぶ「STEAM(スティーム)」。複合的な学習を通して、子どもたちは「知る」と「創る」を循環させ、受動的ではなく自ら学んでいく。日本はいま、教育の変革期に立っている。AERA 2021年2月1日号は、STEAM教育を導入する中高一貫校を取材した。
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保護者の学校選びにも変化の兆しがある。共働きが増え、夫婦共にチームで働いた経験から、やらされる勉強で高偏差値の大学を出ても、これからの社会では通用しないことを痛感。
「学校選びでは、本人のモチベーションと、他者と協働できるコミュニケーション能力を伸ばしてくれるかどうかが重要になってきています」(日能研グループの情報誌「進学レーダー」編集長の井上修さん)
進学実績は良いが詰め込み式の学校と、行事などが充実してワクワクや楽しさを前面に打ち出す学校で迷った場合、以前と違って後者を選ぶ親が増えているという。
STEAM教育に取り組むのは学校ばかりではない。
「研究者であれ」を合言葉に中高生のための学会「サイエンスキャッスル」を開催するのは、理工系大学生・大学院生が01年に創業したリバネスだ。
「研究者」と聞くと、大学や企業で実験をする人をイメージするが、サイエンスキャッスルはウェブサイトでこう宣言する。
「目の前の現象にふしぎと感じる好奇心や、課題を解決しようとする情熱を起点にして、仮説検証を繰り返す。それを諦めず一歩ずつ歩む人こそが、研究者だ。年齢なんて関係ない」
■社会課題を自分ごとに
サイエンスキャッスルは独創的な中高生研究者に対して、企業の協力を得て研究費を助成。現役の研究者からのアドバイスも提供する。コロナ禍にオンラインで行われた昨年のカンファレンスには、国内外から600人を超える中高生が参加した。
同社取締役執行役員の佐野卓郎さんは言う。
「いまでは部活などで、実験・研究に取り組む学校も増えてきました。ただ、日本全体の課題としてあるのは社会課題を自分ごととして捉える力が弱い点です。例えば、教科書に海洋プラスチックやエネルギー問題は書かれているので、生徒たちは知識として知っている。だけど自分との関係にまで意識が及ばないんです。特に恵まれた環境にいる子はその傾向が強い。そこをどう変えていくのかがSTEAM教育の課題だと思います」