まだ国内大会しか経験がないという真野は19年、練習の拠点である福岡で開かれた日本選手権で最初の高さの2メートル10をクリアできず、記録なしに終わった選手だ。だが20年は最初にその高さを成功させて勢いに乗った。

 東京五輪の参加標準記録は2メートル33。真野の自己ベストは昨年9月の全日本実業団対抗で跳んだ2メートル31(日本歴代4位タイ)でまだ届かないが、20年だけで自己記録を3センチアップさせた勢いで五輪出場を狙っている。

 あの浅田真央(30)も、直前のグランプリファイナルで優勝しながらわずか87日差でトリノ出場を阻まれた五輪の出場年齢制限。20年に五輪が開かれていたら参加できなかったが、1年の延期で道が開いた選手もいる。その一人が、昨年12月の体操の全日本選手権に初出場し、4種目の合計で争う女子個人総合で3位と大健闘した15歳の相馬生(朝日生命体操クラブ)だ。

 1歳でハワイに移住し、6歳で体操を始めた。12歳のときには国内選手権の10~12歳部門で全米王者に輝いたこともある逸材。もともとは24年のパリ五輪を目指していたが、五輪の延期が決まり、国際体操連盟が年齢制限を1年延ばしたため、参加の可能性が開けた。新型コロナウイルスの影響もあって昨年の夏に日本に帰国。現在は日本代表として東京五輪を目指している。

■パラ花形に新ヒーロー

 昨年9月に開かれたパラ陸上日本選手権で、会場にどよめきが走った。花形種目のT64(下腿義足・機能障害)男子100メートル決勝で、アジア記録保持者の井谷俊介(25、SMBC日興証券)らを抑え、当時20歳の大島健吾(名古屋学院大学3年)が初制覇したからだ。

 大島は生まれつき左足首から先がなく、生活用義足で中学時代は卓球、高校ではラグビーに打ち込んだ。大学入学を機にスポーツ用義足で陸上を始め、最初の大会で12秒67。2年あまりで12秒を切り国内トップに立った。「番狂わせ」とも言われたが、その後の大会でさらにタイムを上げて11秒59をマーク。

「まだ全然、自分の限界とかそういう感じはしない。これからもどんどん記録を伸ばして、東京パラリンピックで決勝の舞台に立ちたい」(大島)

 再延期や中止もささやかれるが、マイナスばかりではない。伸び盛りの新星たちから目が離せない。(文中敬称略)(編集部・深澤友紀)

AERA 2021年2月1日号より抜粋