東京五輪の1年延期で引退を決めたベテランがいる半面、この1年で五輪代表候補に名乗りをあげた若手もいる。開催はなお不透明だが、選手たちは今も「今年こそ」と信じて努力を続けている。AERA 2021年2月1日号は、延期の期間に力を伸ばした「新星」たちを紹介する。
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20年は東京五輪・パラリンピックの1年延期に加え、新型コロナウイルスの影響で試合も開催されず、練習場所の確保が困難だった競技も多かった。
多くの選手たちが練習の継続やモチベーション維持に悩み、リオ五輪バドミントン女子ダブルス金メダルの高橋礼華(30)、7人制ラグビーで東京を目指していた福岡堅樹(28)、ロンドン五輪銅メダルのバレーボール女子・新鍋理沙(30)ら、引退を決めた選手もいた。
一方で、この期間に着々と実力を伸ばし、代表に名乗りを上げた若手選手がいる。
陸上男子の三浦龍司(順天堂大学1年)は、20年7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会の3000メートル障害で、日本歴代2位の8分19秒37をマークした。世界陸連の規定により、昨年4月6日から11月までの記録は五輪参加標準記録に認められないが、標準記録(8分22秒00)を上回る好タイムだった。
さらに昨年10月の箱根駅伝予選会では、初めてのハーフマラソンにもかかわらず日本人トップでゴール。1時間1分41秒のタイムは、マラソンの東京五輪代表に内定している日本記録保持者、大迫傑(29、ナイキ)が早稲田大学時代に出したU20(20歳以下)の最速タイム1時間1分47秒を上回る。
11月の全日本大学駅伝では1区を担当し、区間賞も獲得した。今年1月の箱根駅伝では1区を走り、後半のペースアップに対応しきれずに区間10位というほろ苦いデビューだったが、トラックでもロードでも存在感を放つオールラウンダーとしての期待が高い。
五輪代表選考レースとして実施された昨年12月の日本選手権(長距離種目)は右足のけがで欠場したため、五輪切符は今後の選考レース次第だ。
■2強独占に風穴あけた
男子走り高跳びでも20年、大きな動きがあった。
14年以降、日本選手権の優勝は現日本記録保持者の戸邉直人(28、JAL)とリオ五輪代表の衛藤昂(29、味の素AGF)が独占してきた。だが20年、24歳の真野友博(九電工)がその2強時代にピリオドを打った。しかも記録は、日本選手権では14年ぶりとなる2メートル30の大台に乗せた。