1年余続いた大河ドラマ「麒麟がくる」もいよいよクライマックスへ! 劇中では、将軍・足利義昭、帝(みかど)、徳川家康、松永久秀ら、光秀が心を通わせた人々の思いを背負って、決起へ――という流れになっているが、真実はどのようなものだったのか? 今回は、本能寺の変をめぐる黒幕の存在について、ズバリ読み解いた。『歴史道 Vol.13』(週刊朝日MOOK)より特別に紹介する。
■古今の歴史家がみんな悩んだ「謀叛の理由」
本能寺の変とは、明智光秀による主君・織田信長の殺害事件である。殺害には、何らかの動機があったはずだが、光秀自身が本心を明らかにすることなく世を去ったため、多くの憶測を呼んできた。
あまりに突然の謀叛で、動機も不可解だったため、「誰かが裏で光秀を操っていたのでは?」という「黒幕存在説」も、古今まことしやかに囁かれてきた。
多くの歴史家たちを悩ませてきた「黒幕説」だが、今回は代表的なものから“トンデモ説”まで、全11説を一挙紹介しよう。
■帝、将軍、宗教勢力……信長を恨む材料は山ほどある
<正親町天皇・朝廷黒幕説>
「信長にとって最大の敵は正親町天皇だった」とする今谷明氏(国際日本文化研究センター名誉教授)の影響が色濃い説。自らの神格化や天皇の譲位、暦の作成などを進める信長に警戒心を抱いた天皇が光秀を使って信長を殺させたと論考する。朝廷と幕府が対立していたという前提に立つ説である。
<足利義昭黒幕説>
信長によって追放され、毛利輝元のもとに身を寄せていた将軍・足利義昭が、かつて自分に仕えていた光秀を背後から動かして謀叛を起こさせたとする説。光秀は、信長を殺害して義昭を京都に復帰させ、室町幕府を再興する目的で、謀叛を起こしたと推測する。
<羽柴秀吉黒幕説>
光秀の最大のライバルで、織田家の出世頭でもあった秀吉が、自らの天下取りの野望のため、光秀をそそのかして謀叛を起こさせたとする説。事件の結果として秀吉が光秀を倒して天下人の座に座り、「最大の利益享受者」となったことから導き出された。
<徳川家康黒幕説>
武田家が滅亡したことで、信長に「用済み」とされそうになった家康が、生き残りをかけて光秀をそそのかし、謀叛を起こさせたとする説。かつて信長の命令で妻の築山殿と嫡男の信康を死に追いやらざるをえなかった家康が、その時の恨みを晴らすためだったとする見解もある。