地位や処遇の向上は「この仕事に就いているから」ではなく、個人の力量によって検討されるべきだろうが、看護の業界には不満も確かにあるようだ。
外国ではどうか。北海道室蘭市出身で現在、米ボストンで「ナース・プラクティショナー(NP)」として働く菊地以都子さん(41)のケースをみてみたい。
■自分の判断で薬を処方
菊地さんは室蘭の公立高校を卒業後、ニューハンプシャー州の私立大学に進学して心理学などを学んだ。当時、英会話ができたわけではないが、映画「羊たちの沈黙」を見てジョディ・フォスター演じる主人公の米連邦捜査局訓練生に触発された。
卒業後は、行動に問題を抱える子どもたちが生活する施設で働きながら、大学院にも通って心理学の修士を取得。カウンセラーとしてクリニックに勤め、個人宅を訪問してカウンセリングをする仕事に就いた。
このときに知ったのが、看護師の上級職であるNPの国家資格だ。
「資格があれば、自分の判断で薬を処方できることを知りました。患者さんに素早く的確な治療を施したいと考えて看護の道に行くことを決めました」
医師の指示がなくても一定の診断や治療ができる資格で、一般の看護師よりも裁量の範囲が広がるというわけだ。
マサチューセッツ州ノースイースタン大学でNPになるのに必要な修士を取り、その後、資格をとった。今はボストンのクリニックに勤め、低所得層の人たちを主な患者として抱えて、診察、診断、処方などを行う。
勤務は規則的。新型コロナの蔓延のため昨年3月からは遠隔診療で、平日の午前9時から午後5時まで働く。
■地域格差が大きな問題
米国での看護師の存在は日本と違いがあるのだろうか。
「少なくともこちらの現場では看護師がプライドを持ってさまざまな主張を遠慮なくしているようです。単なる医師の手伝いではありません。看護師なりの診断と治療目的があり、医師とはチームとして同等にケアをしていくという文化があります。日本ではどうなんでしょうか?」