先が見えないコロナ禍に、日々ウイルスと対峙する医療従事者への尊敬の念が尽きない。一方で、「現場」から離れる看護師たちの姿も目立つ。その背景にあるものとは。AERA 2021年2月8日号で掲載された記事から。
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感謝や尊敬。新型コロナウイルスのパンデミックでは、多くの人たちがさまざまな職種の人たちに対して敬意を抱いた。看護師の仕事も、その一つだろう。
しかし、現実はコロナ禍で労働環境の過酷さが増したり、ボーナスがカットされたり──。日本看護協会の福井トシ子会長は昨年12月に行われた記者会見で、このように窮状を訴えた。
「使命感だけではすでに限界に近づいている」
実際、SNSでは、職場を離れる看護師たちに関する投稿が後を絶たない。
<コロナで前の病院辞めた>
<また一人看護師さんが辞めた。もうやってられない>
■刑事罰に問われる危険
理由はいろいろあるはずだ。都合の良い「感謝」にしらけたのかもしれない。そして、当事者たちが感じる「社会的地位」が低いまま、思うように処遇も上向かなかったという根源的な問題も一因になかっただろうか。
「私たちの仕事は、指一本操作を誤れば患者さんを死なせてしまい、刑事罰に問われる危険とも隣り合わせです。それほど緊張感があるのに、給料は安いし社会的地位も高いとは感じられないというのが現実です」
大阪府の病院に勤務する30代の女性看護師はこう話した。
社会的地位をどう評価するかは難しいが、所得水準を一つの指標とすることもできそうだ。
厚生労働省が公表している「令和元年賃金構造基本統計調査」によれば、看護師の平均給与は月33.4万円。ここには夜勤手当や残業代などは含まれていないが、実態はどうか。大学を卒業後、看護師の資格をとって約10年になるという前出の看護師の場合はこうだ。
「フルタイムで夜勤までやって額面で30万円くらい。税金なんかを引かれて手取りで23万~24万円くらいです」