「今回はステージIの場合は手術のみ、ステージIIIの場合は手術と抗がん剤治療の初期治療のみで比較していますが、がんは進行するほど手厚いフォローアップが必要になり、検診の頻度や内容も変わってきます。通院の交通費など医療費以外の費用もステージIIIの方が多くなるので、お金の負担の差はさらに開くと考えられます」(黒田さん)
支出が増える一方で、収入は減少する傾向にある。重症化するほど、治療で仕事を休んだり、体調不良でやめる人は増えるからだ。10~12年度の厚生労働省研究事業「がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究」によると、がんになることで患者の30%は収入が減少。がんで仕事をやめたと思われる人の割合は、ステージIは24%、ステージIIは26%、ステージIIIは34%、ステージIVは41%と、重症化するにつれて高くなると報告されている。
さらに黒田さんは、ステージが進むほど再発しやすくなることもライフプランに大きな影響を与えるという。
「最初にがんが見つかった時の治療費は高額であったとしても、がんを根治できれば一時的な支出で終わります。ところが再発すると、再び治療が始まりお金がかかることになります」
初期のがん治療は手術を終えて何週間後に職場復帰など、スケジュールのめどが立てやすい。しかし、再発の場合は薬の効果次第という場合が多く、先々の見通しが立てづらくなる。実は、黒田さん自身もがん経験者。09年に乳がんの告知を受けて以来、がん患者からお金の相談を受ける機会も多い。
「なかには『がんと言われたら怖いから検診を受けない』という人もいますが、早期発見して早期治療することで、体だけでなく、経済的な安心も得られます」
(ライター・熊谷わこ)
※AERA 2021年2月8日号