新型コロナによる減収を理由に、がんの検査や治療を控える人が出てきた。だがもしも、がんが進行していれば、初期よりも治療費の負担は大きくなる。ステージが進むほど再発しやすくなることからも、早期発見と早期治療が望ましい。「がん」を特集したAERA 2021年2月8日号から。
【治療費は進行度で3.8倍違う 胃がんの進行度別の治療費はこちら】
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とよひら公園内科クリニック(北海道札幌市)の藤本晶子医師は、「11月からの第3波以降、経済的な理由で検査や治療をためらう人が増えてきた」と語る。
40代の男性は2年前の検診で便潜血で陽性が出て大腸内視鏡検査を受けた。その際、びらん(潰瘍より浅い傷のようなもの)が見つかったことから、半年に1度、定期的に検査をしてきた。昨年11月初旬も検査の時期だったが、「コロナで収入が減少し、余裕がない。2月にお金が入る予定だから」と延期したという。
50代の女性からも、やはり金銭的な理由から胃内視鏡検査の延期の希望の連絡があった。
大腸内視鏡は3割負担で7千円程度、胃内視鏡は5千円程度。内視鏡で異変が見つかり病理検査に出すとさらに7千~1万3千円ほどかかる。
「検査や治療の必要性を伝えたとき、『いくらですか』と聞かれることも増えました。コロナの影響がじわじわと出てきていると感じます」(藤本医師)
しかし、万一がんが進行して見つかれば体の負担はもちろん、治療費の負担も大きくなる。
『国立がん研究センターのがんとお金の本』では、胃がんのステージIとステージIIIで標準治療を受けた場合の治療費の違いが紹介されている。これをもとに、患者が実際に負担する金額をFPの黒田尚子さんに計算してもらった。健康保険適用後は3割負担になると想定、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が限度額を超えた場合に払い戻しが得られる高額療養費も考慮した。その結果、ステージIの場合は約9万円、ステージIIIの場合は34万円と、約3.8倍の違いがあった。