うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格した杉山奈津子さんも、今や小学生の男の子の母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
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最近、「脅し育児」なんていう言葉を耳にするようになりました。
一体どういうものかというと、たとえばデパートでオモチャを買ってほしいと泣いて動かない子に、「いつまでも駄々をこねていると、ココにおいていっちゃうよ」とか、夜更かしをしている子に、「早く寝ないと鬼が来るよ」など、恐怖心をあおる言葉をつかって子どもにいうことをきかせる育児法だそうです。
こうした言い方をすると子どもの精神に悪い影響を及ぼしてしまうため、親はきちんと「なぜオモチャを買わないのか」「なぜ寝ないといけないのか」を説明して、理解させたうえで行動を促さねばならない、とのこと。
先日読んだ記事には、「後から困るのは自分なんだよ。なぜかというと、大人になってから……」という例文とともに、納得してくれるまでしっかり向き合って、正しく理由を話しましょう、と、書かれていました。
■幼い子どもは、納得したうえで自身の感情を制御なんてできない
こうした「脅し育児」の説明に対して、私は、「この用語を作った人は、もしかして子どもを育てた経験がないのでは?」という違和感を抱いてしまいました。 だって、 幼い子どもが、「こういう理由で」「こういうことはしてはいけない」という因果関係を、大人のように冷静に論理的に理解し、納得したうえで、自身の感情を制御してやりたいことをやめる……なんてことができると思いますか?
まだ生まれてからたった4、5年しかたっていない子どもの、「遊びたい」だの「眠い」だの「やりたくない」だのといった、本能に近い強い欲求をただの正論だけでコントロールしようなんて、育児の難易度が高すぎるのではないでしょうか。
たとえば、子どもが病院で、椅子に座っていられずにはしゃいでしまったとしましょう。こういうとき、「看護師さんにしかられるから静かにしなさい」という注意の仕方は、確かに他人側に責任を負わせるという意味で、誤った方法だとは思います。