映画「ライアー×ライアー」は松村北斗と森七菜がW主演。原作は金田一蓮十郎の人気コミック。2月19日公開 (c)2021『ライアー×ライアー』製作委員会 (c)金田一蓮十郎/講談社
映画「ライアー×ライアー」は松村北斗と森七菜がW主演。原作は金田一蓮十郎の人気コミック。2月19日公開 (c)2021『ライアー×ライアー』製作委員会 (c)金田一蓮十郎/講談社
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 映画「ライアー×ライアー」に主演するSixTONESの松村北斗。クールなモテ男子と、ピュアで一途な激甘男子の二面性を持つ役を演じる。演じること、またグループへの思いを語った。AERA 2021年2月15日号に掲載された記事を紹介する。

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 映画「ライアー×ライアー」は同名の人気少女漫画が原作の、親の再婚で義理の姉弟となった二人の一風変わった恋愛模様を描くラブコメディー。松村北斗と森七菜がW主演を務める。

松村北斗(以下、松村):いろんな方から「一回は少女漫画原作の映画をやっておかないとね」という話を聞いていたんです。だから「ついに自分にもその運命が回ってきたか!」という、ゾクッと武者震いするような思いと、半面、自分にそんな世界が演じられるのかという不安がありました。ラブコメって「壁ドン」とか「ドSなセリフを吐く」みたいな勝手なイメージがあったので。でも台本を読んだらそういう表面的なことじゃなくて、キュンキュンとはキャラクターが素直になった状況のもとで生まれるんだとわかった。それなら何とかできるかもと、ホッとするような思いがありました。

——演じる透は女癖の悪いモテ男。親の再婚により、同い年の地味な義姉、湊(森)と同居しているが、ある日、友人に頼まれた湊がギャルメイクでモデルをしている場面に遭遇。湊は咄嗟に「自分はJKのみなだ」と別人であるという嘘をつき、それを信じた透は、みなに猛アプローチをかける。普段はクールな透が、ピュアに一途にみなを追いかける“ツン”と“デレ”、二人なのに三角関係のドタバタコメディーぶりが見どころだ。

松村:あらすじを聞くとラブコメでしか起こりえない展開のように思えますが、実際に演じてみると、疑いなくそういう現実が起きてる感覚になりました。森さんがすごいんですよ。「湊」になったとき、ウィッグをかぶってギャルメイクをして「みな」になったとき、本当に別人に見えた。人って誰でも相手によって違う一面が引き出されることはあると思う。台本を読み込んで、透の思考と重なっていくなかで、自然に二面性は出せたかなと思います。ただ、湊に対する態度は、監督と相談しながら現場で足し引きを重ねました。透にはぶっきらぼうに振る舞う「裏」の気持ちがあって、クールだけど「怖い」とは思われたくなかった。秘めた心情をセリフという音にして調整していくのは難しかったです。

■かなりこじらせている

——では松村北斗が恋をしたら、どんな一面が引き出されるのか。透と共通点はあるのだろうか。

松村:昔から「好きかもな」と思ったら、自分でその気持ちを否定するタイプなんです。「いや、すごく話しやすいしいいやつだけど、そういうんじゃないんだよね!」みたいな。誰がどう見ても好きなのに「いや、違うんだよね!」と言い続けるという、かなりこじらせている感じですね(笑)。うち(SixTONES)は「ウェイ!」みたいな強めで勢いのある人間ばっかりで、僕はそういうタイプじゃないからクールに見られがちなんですけど、全然、かっこいいクールさは持ち合わせてなくて。透と違ってモテる要素はまったくないです。ただ、人見知りではあるんですけど、打ち解けた人の前ではかなりふざけますし、結構明るいんですよ。可愛げのあるほわっとした空気感を出すのも、出している人も好き。自分もそっちのタイプなので、うちのメンバーとは、同じ学校だったら友達になっていないと思う(笑)。

——デビュー前に出演したドラマ「パーフェクトワールド」で注目を集め、現在放送中のドラマ「レッドアイズ 監視捜査班」では天才ハッカーを演じている。俳優としての活躍が続くが、個人の仕事は、いい意味でグループと切り離して考えている。

松村:基本的にお芝居をしている時は楽しいので、幸せな状況が続いていますね。「レッドアイズ」は主演が亀梨和也さん(KAT-TUN)で、久しぶりに先輩がいる現場ですが、僕、先輩の懐に飛び込んで、後輩としてうまく立ち回れるようなタイプじゃなくて。現段階では「先輩」というより「主演の方だ!」と思って接しています(笑)。

 そういった個人のお仕事は、SixTONESというホームから出て行ってやっている感覚ではなくて、一個人として責任を持ってやっていかないといけないという感覚です。そうしないとグループであることにあぐらをかいて甘えてしまいそうで。グループに戻ると安心するんですよ。一緒に過ごした時間が長いし、僕のことも理解してもらえる。でも「だから大丈夫」と思ってはいけない。自分に厳しくありたいので。

■この作品と過ごした

——SixTONESの一員として、この映画の主題歌「僕が僕じゃないみたいだ」も歌う。グループ4枚目のシングルだ。

松村:僕、個人的にSixTONESというグループがすごく好きなんです。自分がいるグループだと思って、自分のパフォーマンスを中心に見ると反省点ばかりなんですけど、ときどき心の状況によって、自分と切り離して見られるときがある。そのときは、曲も含めて、すっごくかっこいいグループだなと思うんです。だから自分が応援している、惚れ込んだグループが自分の映画の主題歌に入ってもらえたような感覚もあるし、逆にSixTONESの一員としては、すごく惚れ込んだ映画作品の主題歌を務めさせてもらったという思いもある。一人で何人分もの幸せを味わわせてもらってます。早く死にそうで怖いんですけど(笑)。贅沢なことだと思っています。

——デビューして1年。新型コロナウイルスに活動を阻まれながらも、破竹の勢いで進化を続けている。その日々の中でも、この作品は自身にとって大きな存在だったと振り返る。

松村:昨年1月にデビューして、何が何だかわからないまま駆け抜けて、少し思考に余裕ができた頃にこのお話をいただきました。ステイホーム中はこの作品のことを考え続け、ちょうど自粛期間が明けた7月ぐらいに撮影が始まって……。それが今、またコロナで大変な時期になりながらも、一緒に年を越して公開を待っている。この作品と共にこの時期を過ごせたことは、大きな支えでした。今は個人でもグループでもやりたいことがたくさんあって思いがたぎっています。苦しむことも悩むこともあるけど、それすら楽しい。そういう感覚を、いつまでも持っていたいと思っています。

■うそって難しいと実感

——映画はうそから物語が始まる。最後に自身のうそにまつわるエピソードを尋ねた。

松村:このあいだ取材で「何か苦手な食べ物はありますか?」と聞かれて深く考えずに「ないです。何でも食べます」と答えたんですが、その後、有名な天むすを差し入れしていただいて……僕、甲殻類アレルギーなんですよ(笑)。その日、ものすごくおなかがすいていたんですけど食べられないので、「ありがとうございます!」といただきつつ、水を飲んで我慢しました。今さら言うのも悪い気がして。そう、うそって難しい。相手を傷つけないためにつくこともあるから、一概にダメとも言えないですしね。ぜひ「うそから始まるありえない恋」の行方も見届けていただけたら!

(ライター・大道絵里子)

AERA 2021年2月15日号