「リーグ(のカテゴリー)が上がれば技術も高くなり『プレーしたい選手』が増える。プレーの質を見てもらってNHLを目指す。だからAHL(=野球の3A相当)よりECHL(=同2A相当)の方がラフも多かった感じ。また日本人というので標的にもされる。プレーでも言葉でも、いろいろある。でも舐められたらダメだから、我慢せず向かって行った。そういう姿勢を見せればチームメイトも、やり返したりしてくれた」(福藤)

 上のリーグ(最終的にはNHL)を目指す中で、ラフが必要になることもある。自分自身の存在感、居場所を掴むためには意図的に行動する時もある。そこで起こる乱闘には、暗黙のルールが存在することも忘れてはならない。

「グローブは必ず脱ぐ。1対1で乱闘して勝負がつくまでは止めに入らない。その辺はルールというかマナーがある。国内ではグローブ脱いだら、すぐに反則を取られる。そこは全く異なる」(平野)

「素手の方が殴られれば痛いし、殴った方も衝撃は少ない。それでもみんなグローブ脱ぐのは、暗黙というか伝統。乱闘開始までの準備時間がある場合は、グローブだけでなくヘルメットも外す」(福藤)

 許せないプレーに対しての報復以外にも、乱闘は存在する。北米では「試合=興行」という側面もあり、乱闘がエンタメとしての役割も果たすことがある。観客を楽しませるために行われ、プロレスの場外乱闘と似た部分だ。

「選手同士で乱闘を作り出す。試合の流れが悪く、ファンも飽きて場内が冷めている時がある。各チームに乱闘専門的選手がいるので、ベンチ越しに「やるか?」と話し合う。監督に『俺たち、やってくるから出してくれ』と伝えて派手に暴れる。両選手とも分かったもので、ケガをしないように暴れペナルティボックスに入る。審判も分かっているから手際が良い」(平野)

「国内で意図的な乱闘が盛り上がるか、というとそうでもない。日本ではショー的なものは、まだまだ認められない。まずは全体のレベルを上げることが大事で、その前に一つずつのプレーをもっとハードにすることが先。IHの知名度を上げることが大事。そこが北米との大きな違いかな」(福藤)

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北米では毎晩、乱闘をする選手も…