そして、こう念を押す。
「遺言書を書いてハイ終わりではなく、毎年書き換えたり、遺言執行者を決めたり、遺贈先を考えたり。余談ですが私のクライアントの94歳の女性は毎年相続人の相続配分を書き換えています。その年に親孝行をした人に多めに分配するそうです」
■墓
エンディングデザイン研究所の代表で、東洋大学客員研究員の井上治代さんは、夫婦で死後にどこに眠りたいのか、意思の確認をしつつ「互いの気持ちを尊重すること」が大切だと説く。
「散骨を希望していたのに、そのメモに、奥さんが納骨後に気づいてしまった、という残念なケースもあります」
これまでは家族で入り、継承していくことが当たり前だった墓。ところが現代は墓の多様化が進み、「死後離婚」という言葉まで生まれた。この言葉の生みの親は井上さんだ。
「死後離婚とは、死後に夫と離れる、つまり墓を分けるということ。人生を閉じるときに思い出すのは、生家だったり、自分の子ども時代の親との思い出だったり、夫婦の時間だけではない自分の人生を総括するもの。墓も葬儀も夫婦で個別性を尊重していい時代です」(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2021年2月19日号より抜粋