この不安を軽減するには生前から「夫婦で一緒にキャッシュフローを作っておくこと」だ。
毎年の収入と支出を書き出して表にする。支出は、家賃(住宅ローン)やその他住宅費、基礎生活費(食費、通信費、日用品など)、生命保険料、趣味代、税金等など。100歳くらいまでの収支と預金残高を表にする。年金暮らしで、貯金を取り崩した生活者の場合、何年後に赤字になるのかがざっくりと見えてくる。現実を見るのは恐ろしいが、目を背けるべからず、というのは前出の板倉さんだ。
「ご主人がいなくなったあと、例えば月20万円の生活費がかかるとして、それで何年やっていけるのか、ぐらいは知っておくべきです。夫婦じまいの基本です」
節約のために、保険の解約を考える人もいる。しかし山田さんは、安易に解約すべきではないという。理由は、生命保険が役立つのは年を取ってからというケースが多いからだ。
「相続でもめたとき、受取人の手続きだけで受け取れる生命保険は頼りになります。また、入院や手術が必要になる疾病にかかりがちなのも、65歳以上から。万一のときに保険金(給付金)が受け取れるのは大きな安心です」
個人賠償責任保険も住宅の保険も必要だと考える。
「(注意すべき点は)自動車を手放して自動車保険がなくなると、特約で付帯していた個人賠償責任保険も一緒に解約されます。自転車事故など、どこでどんな事故があるかわかりませんから、個人賠償責任保険は住宅保険の特約でつけるなど、どこかで入っておくべきです。このところ自然災害も多いので、再建に役立つ住宅保険は必須です」
こういった保険関係の資料の保管場所や連絡先を万が一のときのために夫婦で共有するのは当然の作業だ。
終活ライフケアプランナーの資格を持つ女優の財前直見さんはこうした情報を書き込むため、無料でダウンロードできる「ありがとうファイル」を考案。A4サイズのクリアファイルさえ用意すれば、簡単にエンディングノートが作れる。
「エンディングのことだけでなく、今のこと、そして未来のことを家族で話し合うために活用してもらえたら嬉しいです!」(財前さん)