不眠やうつ病、脱毛など様々な症状の原因になりうる「ストレス」。3月24日付の朝日新聞は「腰痛2800万人 8割原因不明…心の悲鳴かも」と報じ、学会でもストレスも腰痛の引き金になると認定されたことを紹介している。精神的ストレスで心を病むことは想像しやすいが、体にもストレスの影響が出るという認識が定着しつつある。

 そもそも、ストレスを受けると体に変化が起きるのはなぜか。

 パブリックヘルスリサーチセンターストレス科学研究所副所長で、日本大学医学部附属板橋病院心療内科の村上正人部長はこう説明する。人間の体は、身体の働きを調整する「自律神経系」、ホルモン分泌を調整する「内分泌系」、ウイルスなどの外敵から身を守る「免疫系」の三つの働きがバランスを保ち健康を維持している。外から働く力(ストレッサー)などによってそのバランスが乱れると、全体のシステムにも影響が生じ、体の機能に変調をきたすという。

 意外なのは、体内の病気ばかりでなく、腰痛や肩こりなどの「痛み」に精神的なストレスがかかわっていることだ。

 ストレスを感じると自律神経の中の交感神経が優位になり、その緊張状態が血管を縮こまらせ、筋肉を硬くさせ、こりにつながる。メーカー勤務の会社員男性(33)のケースなどはその典型で、納期が近づくと頭痛と肩こりに悩まされ、無事に納品を済ませると痛みが消えるという。

 しかもストレスは痛みをさらに強めるのだ。福島県立医科大学教授の大平哲也医師によると、例えば肩がこっていた場合、意識がつい肩にいってしまい、肩の交感神経が緊張して、筋肉や血管が収縮。血流が悪くなり、発痛物質が出て余計に痛くなる。意識が肩にいき、さらに痛みが増す。

「ストレスは考え続けることで悪化する。これが『ストレスの悪循環』です」(大平医師)

AERA 2013年4月15日号