難しいからこそやる価値もある。廣瀬助教は、研究と消化器内科の臨床を両立させて物理学的な流体シミュレーションや解析にも取り組む。

 医学の分野では、2000 年代初期に出た治療薬は軒並み新しく変わり、最新の薬は格段に効果が高まっている。それにもかかわらず、感染制御の分野だけが変わってこなかった。

 だが、廣瀬助教らの研究で、ようやく変化の兆しが見えている。現在は国内メーカーとの共同で、皮膚についたウイルスを素早く無効化する研究を進めている。

 また、付着する素材によって病原体の生存期間が変わることもわかり、そのメカニズムの解明にも力を注ぐ。

 接触感染と飛沫感染のリスクについてはまだよくわかっていないが、廣瀬助教は飛沫が空間内に漂うエアロゾル感染の可能性も視野にいれ、接触感染のリスクも重視する。

 現在の関心は、皮膚上のウイルスが体内にどれくらい入れば感染が成立するのか、そして飛沫ウイルスはいつの段階で感染力を失うのか。流体シミュレーションは、感染力を失うところまでを計算して作る。

「これらの部分が解明できれば、さまざまな感染リスクが評価できてウイルスに強くなれる。今後10 年、20 年、おそらく非常に面白い分野になるでしょう」

(文・小坂綾子)

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