■実はコミカルな一面も

 玉壺は、鬼滅ファンの間では、「気持ち悪い」と言われながらも、「カワイイ」キャラクターとしてデフォルメされることがある。頭部側面から生えている、小さくて細い2本の手を、足のように使って小走りに移動したり、「ヒョヒョッ」とおかしな声を発したりと、彼の様子が、時々コミカルに表現されるからだ。

 しかし、玉壺のキャラクターの重要性は、そんな奇妙なおかしみだけではない。彼は、『鬼滅の刃』の登場人物の中で唯一、無口な剣士・時透無一郎を「たくさんしゃべらせることができる」のだ。

 戦闘中、玉壺と無一郎は、互いをののしり合い、おちょくり合う。無一郎は毒舌なキャラクターではあるが、口数は極めて少なかった。しかし、玉壺を目の前にすると、よどみなく悪口があふれ出るのだ。玉壺と無一郎、どちらが「便所に住んでいそうか」と真剣に言い争う様子など、今後のアニメ化で楽しめそうな「舌戦」の場面が、たくさん盛り込まれている。

 鬼滅ファンの間では、無一郎とのセリフのかけ合いへの期待から、玉壺の声優が誰になるかも、今から注目されている。

■玉壺の「重要な役割」とは?

 このように玉壺は、時透無一郎のやや底意地の悪い面白さを引き出している。それだけでなく、卑劣な玉壺の戦い方によって、無一郎は「他者を守ること」の大切さを思い出し、剣士としての真のパワーを発揮できるようになる。もともと玉壺は、「人間の子ども」を蹂躙することを好む鬼だった。そんな玉壺が、少年剣士・無一郎と対決するのは、物語上、必然だったともいえよう。独特な美意識を持った玉壺が、美しい少年・無一郎の暴言に翻弄されていく。

 また、玉壺は、鬼の滅殺のための武具「日輪刀」を作る刀鍛冶・鋼鐵塚蛍(はがねづか・ほたる)とも、向き合うことになる。「真の芸術家」であり、技術・集中力ともに極まっている鋼鐵塚を前にすると、玉壺は「自分が芸術家として負けているような気がする!!」と不快になる。このセリフの直後、お面で隠されていた鋼鐵塚の顔が明らかになるが、玉壺の相貌とは、これまた対照的である。

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玉壺が体現する「悪徳の醜悪さ」