さらに、この玉壺は、戦闘時に「血鬼術」と呼ばれる、鬼だけが使える妖しい術を使って「魚型の化け物」を出現させる。この化け物は、金魚やコイのような形なのだが、うろこだらけの体には、大きなコブ、人型の太い手足が生えていて、おぞましい姿をしている。その他にも、彼は巨大なタコの足や、毒を持った無数の魚を出すが、形、ぬめり、悪臭と、人に嫌われる要素しかない。

■玉壺の生い立ちと感性

 先日発売されたばかりの『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弍』には、玉壺が「自分の体を改造するのが好きだった」というエピソードがそえられている。つまり、前述の玉壺の外見は、彼自身が作り上げたもので、彼の感性からすると「美しい」らしいのだ。彼のこの感受性は「鬼になった後」に生まれたものなのだろうか?

 実は、玉壺は、彼がまだ人間だったころから周囲の人間から嫌われていた。水難事故で亡くした自分の親の水死体に「美」を見いだしたり、魚の死骸を集めてみたり、人間の子どもを殺害して壺に押し込んだりしている。彼の「歪んだ美意識」は、人間の頃にすでに形成されており、その特性が鬼になった後も、引き継がれているのだ。

■玉壺の「芸術作品」と美意識

 こんな美意識をこじらせて、玉壺は、自分の「作品」をあちこちで披露するのが好きな、「芸術家」もどきの行動をとっている。玉壺が身を潜めている壺は、彼自身が作ったものだが、彼が創作するのは壺だけではなく、その壺に「生きた人間」を詰め込み、「芸術作品」へと作り替えるのだ。

 息の根を止めない程度に加減しながら傷つけられた被害者たちは、玉壺にいたぶられ悲鳴をあげる。「どうですか 素晴らしいでしょう 断末魔を再現するのです!!」とうれしそうに解説する玉壺は、芸術家などではなく完全に異常者である。玉壺と対峙した鬼殺隊の霞柱・時透無一郎(ときとう・むいちろう)は、この玉壺のおぞましい作品を見て、「いい加減にしろよ クソ野郎が」と珍しく怒りをあらわにする。

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無口な時透無一郎を「しゃべらせる」