17歳でキャリアをスタートし、現在もモデル、俳優、コメンテーターとして活躍する冨永愛さんがAERAに登場。モデルという仕事について、「天職」ときっぱりと語った。AERA 2021年3月1日号から。
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ポーズを取り始めた途端、スタジオの雰囲気が一変した。蜷川実花さんが「モデル冨永愛」に向かい合いたいと、自らの色を消して臨んだセッション。そこにはため息と称賛と。見る人すべてを酔わせてしまう美の喜びが満ちていた。
撮影は、長くキャリアを積んできた冨永さん自身にも「毎回何が起こるかわからない」と言わしめる。
「フォトグラファーが私の内を引き出すこともあれば、自分が出すこともある。お互いが絡み合っていくものなので、私はニュートラルで現場に入り、フォトグラファーと対峙(たいじ)しながら自分自身の直感とセンスで作り上げていく。でも、最終的には必ず、両者がこれだという着地点がある。今回なら『純粋さ』かな」
17歳で制服姿の写真がファッション誌「ヴォーグ」に掲載されたことをきっかけに、世界的なモデルとしての道を歩み始めた。出産や子育てで休業期間はあったが、今もトップモデルとして輝き続ける唯一無二の存在だ。モデルの楽しみは「すごく簡単に言えば、いろんな自分になれること」と話す。
「人はどんな見た目であってもいろんな引き出しを持っている。引き出しの数は誰でも同じで、モデルはそのいろんな引き出しをどのくらい開けるか、開けやすい状態になっているかだと思うんです。どこをどの割合で出すか、そのさじ加減で全然違う自分が見えてくる。(撮影者がそれを)見せてくれるし、撮ってくれる。そこがすごく面白い」
そんな“引き出し”を開けやすい状態にするためには、第六感も含めた「感覚を研ぎ澄ませること」が必要だ。
「人工的な音がない自然の中が一番。土があって木が生えていて少し広めの公園でいい。風の音や香り、風が肌に触れる感触、陽の色、強さ……そういうものを意識的に感じるようにして、ニュートラルになれる自分を作っています」
(フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2021年3月1日号