多くの投資家が自己破産して社会問題になった「かぼちゃの馬車」事件から3年。不動産投資には今も若者たちが群がる。一体なぜ。リスクはないのか。AERA 2021年3月1日号から。
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「いよいよ不動産不況の足音がしてきました」
不動産業界では今、こんな声を耳にすることが増えている。
「名古屋はバブル崩壊前夜。去年完成した投資用の新築ワンルームマンションで半分以上空室になっているものもあります」
業界関係者はそう打ち明ける。
だが2月中旬、都内の雑居ビルで開かれた不動産投資セミナーは5~6メートル四方の部屋を30人ほどの参加者が埋め、個別面談を行う七つのテーブルで熱心に説明を聞いていた。「今すぐ始められる不動産投資」「儲かる投資戦術」などと銘打ったオンラインセミナーも活況で、ある企業では開催の数をコロナ禍以前より大幅に増やし、1年8カ月ほどの間に累計7千人が受講したという。
■「儲かる物件ください」
セミナーの関係者に尋ねると、参加者の多くは20~30代の若者や公務員で、先行きや給料の減額を心配している人が多いという。不動産販売会社の社長は「ネットで物件情報を公開すると、たちまち30件以上の買い注文が入る。画面の向こう側で待ち構えているのではと思うほどだ」と語る。
問い合わせには、「儲かる物件ください」「全額ローンで買える物件希望!!」といった稚拙な内容もある。YouTubeを2~3度見て投資を学んだだけという人、年収が400万円に満たない人もいる。700人以上の個人投資家が億単位の借金をし、自己破産者を出して社会問題となった「かぼちゃの馬車」事件から3年余り。歴史は繰り返すのだろうか。
個人投資家に不動産販売やコンサルティングを行う神農貴大さんは「当時と違って、金融機関が取引する不動産会社を選んでいる、年収700万円以下だと融資が出ず、1~2割の自己資金が必要という点でかぼちゃの馬車問題のようなことは起こりづらい」と語る。
コロナ禍は新しい顧客層も生んでいるという。