週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「肝がん治療」の解説を紹介する。
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肝がんには、肝臓の細胞から発生する原発性肝がん(肝細胞がん)と、大腸がんなど他の臓器のがんから転移してくる転移性肝がんの二つがある。
原発性肝がんの原因となるのは、主にB型肝炎やC型肝炎など肝炎ウイルスの感染で起きる肝硬変や、大量の飲酒によるアルコール性肝障害、非飲酒者の脂肪肝炎などだ。
治療は、肝臓の機能(肝予備能)がどの程度保たれているかによって異なる。肝機能が比較的良ければ、手術による切除が第一選択となる。切除では従来の開腹手術のほか、最近ではからだへの負担が少ない腹腔鏡を使った手術もおこなわれている。
肝機能が悪く、切除をすると肝不全を引き起こす可能性がある場合やがんが複数ある場合、転移性肝がんでは、ラジオ波焼灼療法やマイクロ波凝固療法、塞栓(カテーテル)療法もおこなわれる。
ラジオ波焼灼療法とマイクロ波凝固療法は、からだの外から肝臓に針を刺し、針の先から高熱を発してがんを焼く方法。塞栓療法は腿の付け根の血管からカテーテルという細い管を肝臓まで通し、がんに栄養を運ぶ血管に詰め物をしたり抗がん剤を投与したりして、がんの増殖を抑える方法だ。
また、がんの数が多かったり、肝臓外に転移したりしている場合などには、分子標的薬や抗がん剤などの化学療法、肝臓の状態が非常に悪い場合には肝移植も検討される。
肝臓外への転移がない原発性肝がん(肝細胞がん)では、肝臓の機能の良しあしを表す「肝障害度」(キーワード参照)が手術による切除か切除以外の治療かの選択を大きく左右する。また、腫瘍の大きさと個数も重要な要素となる。