結婚の奴』(平凡社)能町みね子


「昨年よく売れた」という一冊。“ゲイの夫(仮)との恋愛でも友情でもない生活”を描く。「日常の中に、人生観や内面が深く書かれている。自分に対しても他人に対しても、『こうしなければ』と決めつけなくていいんだ、と思わせてくれます。何かしっくりこない、と感じている人に読んでほしい」

『百年の女 「婦人公論」が見た大正、昭和、平成』(中央公論新社)酒井順子
女性をめぐる日本の歴史を「婦人公論」から考察する。「いろんな人の努力があってここまで生きやすくなったのだと感慨深い。今やっていることが世間とズレているように感じても、何十年後かには世間のほうが変わっているかもしれないと希望をくれます。酒井さんならではの読みやすさがある」

『キュロテ 世界の偉大な15人の女性たち』(DU BOOKS)ペネロープ・バジュー著、関澄かおる訳
「古代ギリシャ初の女性医師、女性用水着を開発したオーストラリアの女優、女性教育に力を入れた武則天など、自分の力で何かを成し遂げ、時代を切り開いた女性たちが紹介されています」。逮捕されたり死刑宣告されたりしながらも立ち向かい続ける姿にパワーをもらえる。第2弾の『キュロテ・ドゥ』も発売中。

■最低限の知識を押さえて、議論をより有意義なものに

田中俊之さん
たなか・としゆき/社会学者。大正大学心理社会学部准教授。専門は男性学。『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』ほか著書多数

 田中俊之さんが専門とする「男性学」は、男性だからこその悩みや葛藤を対象とした学問だ。ジェンダーをめぐる議論が盛り上がっている現状は好ましいとしながらも「交わされる議論を見ていると既視感があって、過去にもう議論され結論が出ている話も多い」と分析する。「日本で女性学や男性学がどう発展してきて、そこで何が問われていたか、学術領域では基本的にみんなが押さえていることが押さえられないまま議論されているように思います」

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