『男子が10代のうちに考えておきたいこと』[自著](岩波ジュニア新書)田中俊之


中高生向けにジェンダーの基本的な視点を知識として提供する一冊。「大学で教えていると、もう少し早い段階でジェンダーについて知識を身につけたかった、という学生は多いんです。なかでも、男の子たちに自分の『男らしさ』について当事者意識を持って考えてもらいたいという目的で書きました」

■産む性として生きていない肉体的な性差を問題提起

山崎ナオコーラさん
やまざき・なおこーら/作家、性別非公表。『人のセックスを笑うな』でデビュー。現在は1歳と4歳の2児の親。著書に『母ではなくて、親になる』『ブスの自信の持ち方』など。

 ジェンダーについて問い直されることが増えた一方、「肉体的な性差」は明確にあるものとして捉えられている。これに疑問を抱き、「体の能力を社会的に捉え直してみたかった」という山崎さんが昨年放った新刊が『肉体のジェンダーを笑うな』だ。性別非公表の山崎さんは、そもそも「肉体に性別があることが引き受けられない」という。「男性」「女性」は、ひとくくりにして主語にするほどの属性ではないと思っているからだ。

 中学のとき、当時は「子を産む性だけが風疹の予防注射を打つ」とされていて納得がいかなかった。「私は人間です。産む性として生きてはいません。私は出産をしましたが、産む性だから産んだわけじゃない。たまたま子宮があったから子どもを産んだ、ぐらいのほうがしっくりくるんです」。技術が進化すれば肉体の性差すら超えられる。であればそれは、社会的に作られた性差なのではないか。「肉体のジェンダー」という言葉にはそんな問題提起が込められている。

『わたしはフリーダ・カーロ:絵でたどるその人生』(花伝社)マリア・ヘッセ著、宇野和美訳
自画像の数々が有名な画家の生涯を描いた漫画は、山崎さんの夫が誕生日にくれたもの。「フリーダ自身が性別を超えようと思っていたかはわかりませんが、世間一般で思われている『女性』というものに全くこだわっていない。浮気もするし男装もする。自分が思う『女性』のあり方を邁進した人だと思う」

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