ひざの痛みや動きづらさに、長年悩んでいる人は多い。「年のせい」と我慢すれば症状が悪化していき、ロコモティブシンドロームで将来寝たきりになるリスクが高まる。早めに膝関節の状態を確認し、治療に取り組みたい。
* * *
膝関節は体重を支え、「立つ」「歩く」「座る」などの日常動作において欠かせない役割を担う。
ひざは、けがやスポーツ障害以外に、病気で痛みが起こる。中高年以降に圧倒的に多いのは「変形性膝関節症(OA)」だ。おもに加齢により膝関節の骨の表面を覆う関節軟骨が変性し、すり減って発症する。進行すると骨同士がぶつかって変形し、強い痛みや動きづらさが表れる。移動機能が低下するロコモティブシンドローム(運動器症候群)の主要な原因疾患の一つだ。
X線検査によりOAとされる患者は日本で約2500万人いるという。高齢になるほど増加し、女性は男性の約3倍多い。日本医科大学病院整形外科・リウマチ外科部長・主任教授の眞島任史医師はこう話す。
「60歳以上では70%に膝関節の変形がみとめられますが、痛みなどの自覚症状がない人も含まれます。日本人はO脚が多いため、膝関節の内側だけがすり減っているケースが多くみられます」
痛みが急激に起こった場合には別の病気も考えられると、新上三川病院副院長・関節センター長の関矢仁医師は指摘する。
「中高年になると、膝関節の隙間でクッションの役目をする軟骨組織である半月板が切れ、急激にひざに痛みが起こる半月板損傷も多くみられます。その場合、半月板の切除・縫合などの治療が必要です。放置すれば、疲労骨折を引き起こすため、注意すべきです」
その他、偽痛風、骨壊死、化膿性関節炎、関節リウマチなどとも鑑別が重要だ。X線検査に加え、MRI検査や血液検査などが実施される。
「痛みが強い、曲げづらい、腫れているなど、気になる症状があれば、整形外科を受診して原因をはっきりさせることが大切です」(眞島医師)
■基本は保存療法 5%減量を目標に
一般にOAは、前期・初期・進行期・末期へと年月をかけて進行する。症状の出始めに注意が必要だという。